セイバーメトリクス

セイバーメトリクスという野球の統計分析に当たるようなものがあります。

(Society for American Baseball Research)とメトリクス(指標)を組み合わせた言葉です。

 これを当時資金不足で弱小チームであったオーランド・アスレチックスに取り入れて常勝軍団にまで育てたビリー・ビーンという方が有名です。
 ブラッド・ピット主演の映画『マネー ボール』でご存知の方も多いかと思います。
 私も、映画はもちろん書籍も読みました。
 今でもそうですが、野球選手を打率やホームラン数、盗塁数等で評価することが一般的だと思います。
 ビリー・ビーンはそうではなくて出塁率を重視しました(他にも相手の投球数をどれだけ稼げるか等いろいろあります)。ヒットでも四球でも何でもいいのです。
この視点で見ると、打率が高くなくても、選球眼が良く四球等で出塁率が高い無名の選手が、突然隠れた優秀な選手として浮かび上がるのです
 投手なら勝数ではなく、例えばクオリティ・スタートという先発投手が6回まで自責点3点以内に抑えたときに記録されるもの等があります。
 このビリー・ビーンの取り組みは、当初は他球団から見向きもされないどころか、球団内のスカウト担当の陣営からも反発がありました。
 しかし、結果はアスレチックスの成功を受け、多くの球団が取り入れだしたため、より複雑な指標も開発されているような状況にまでなっています。
 ここで強調したいのは、この例はデータによる指標がベテランや現場を熟知する人々の経験を上回るということではありません。
 なぜなら、指標の結果を受けて行動を起こすのが、その経験を豊富に持つ現場だったりするので、「データでこうだから」という押しつけでは、一丸となった行動は不可能です(ビリー・ビーンはかなり激しくやりあったようですが、個人的にはこれは結果オーライの話で、特に日本では難しいと感じます)。
 ただ、データ等の分析から今までになかった新しい次元を加えて物事を考えた成功事例として非常に面白い話だと思います。
以下に『マネー・ボール』の映像(予告編)を参考に載せました。

 

橋本圭司

ユニークな成果測定の事例

Airbnbというサイトがあります。個人の部屋・アパート・家を貸し出すことで、旅行者にはホテルの代わりを、貸し手(ホスト)は新しい収入源を得られるサービスです。

このサービスは2012年に世界で500万泊の予約を得るほど急成長したものですが、『LEAN ANALYTICS』(アリステア・クロール、ベンジャミン・ヨスコビッツ著)で紹介されている仮説⇒データ収集⇒成果測定の方法がとして面白いです。
まず、「プロの写真を使ったホストの方がビジネスがうまくいく」という仮説を立て、すばやくテストを行う。
その結果、プロの写真を載せた場合は宿泊予約数が平均よりも2~3倍多いことがわかったため、2011年頃からホストに提供する写真を20人のカメラマンに撮ってもらうことにした。
そして急成長。
という内容です。
分析は平均値を見るという非常にシンプルなものですが、「プロの写真家に撮ってもらった場合の予約数」を追いかけるという独創的な発想に基づく行動とデータ収集といった流れが非常にスムーズです。
この内容を読んで、闇雲にデータが既にあるから、もしくは世間でよく採られているからという理由でデータ収集の内容を決めて収集し難しい分析をする前に、自分の求めている成果(この場合は、いかに予約数を増やすか)という根元の大目的の部分をきちんと掘り下げて、そのためにどういう行動を取るか、そしてその成果をどのような数値で追いかけるか、新しい切り口がないかを日頃から意識することが大切なのだと再認識させていただきました。
airbnbのURL(日本語サイト)は下記となります。
https://www.airbnb.jp/
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
橋本圭司

企業における統計分析と実務について

近年、ビックデータ分析等といった言葉が流行り、街の書店でも関連書籍や雑誌の特集記事がよく見られるようになりました。
それでは、これは最近出てきたものなのかというと、そういうものばかりではありません。
確かに、専門書ではサポートベクターマシン、ランダムフォレスト等といった、私が医学部にいたときでも聞いたことがなかったような難しい言葉の分析手法がよく紹介されています(しかも一般社会人を対象にしたビジネス用書籍にです!)。
こういった分析が盛んに取り上げられるようになったのは、過去と違いPOSデータやログデータといったものが全てコンピュータで大量に蓄積できるようになったこと、コンピュータの演算能力の著しい向上等の寄与が強いと思われます
これらの成果は、迷惑メールのふるい分けや、インターネットショッピングでの「あなたにオススメの商品」「これを購入した人はこれも購入しています」等といった機能に見られます。
このような分析手法が、統計の専門家ばかりが読むわけではないビジネス書籍に紹介されているわけですが、こういった書籍では理論的な説明等少し不足しているものが多い気がします。
分析手法の選択や結果のビジネスの場への適用は、企業の目指す目標や集計されたデータの性質といったものを総合的に鑑みて、段階的に進めるべきだと考えます。
例えば、会議で
「アソシエーション分析で信頼度と支持度を云々した結果、来週以降は商品の配置を変えたほうが良いと考えます」
と言われて、心から納得して
「ぜひやりましょう!」
とはならないのではないでしょうか。ほとんどの方が、狐につままれたような気持ちで釈然としないまま終わってしまうことが多いかと思います。
その結果は、分析した内容の中途半端な日常業務への落とし込みと非効果的な結果につながりかねません。
これと似たようなことは、私自身苦い経験としてあります。
そこから得た教訓として
「裏でどれだけ難しい分析をしても、表ではグラフや簡単な分析結果を通して示す。」
というものです。
そして、
「たくさんデータがあっても、その構造を見やすくして、現場の方と一緒に意味を解釈する。」
となります。
まずは、偏見なく腰を据えてデータの持つ意味に向き合うべきです。
これまで述べたような分析手法は、向き合った結果本当に必要な場合のみ検討すべきものです。
複雑なデータを紐解いて、営業の方にも、事務の方にも、企業で働くすべての方々が理解しやすい形で新しい見方、隠されたデータのパターンを示す。
そして、本当に納得していただいた上で、その結果を日々の実務に落とし込む。
これが様々な能力や背景を持つ人々の集まりである企業における統計分析で最も大事なことだと考えます。
加えて、このようなアプローチはアウトプットだけを見れば簡単な分析に見えますが、実は最も難しいことなのだと思います。
ですので、私自身これからも日々継続して研鑚する必要がありますし、今日より明日、明日より明後日と日々進化していく所存です。
今後とも、よろしくお願いいたします。
橋本圭司