MECEの実現に関して

コンサルティングの分野で頻繁に言われるMECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)というキーワードがあります。

これは要するに、何かを分析・検討する際に「重複なく」「抜けなく」しましょうという意味です。

その一助となるのがマーケティングの4P(Product/Price/Place/Promotion)や、SWOT(Strengths/Weeknesses/Oppotunities/Threats)といったフレームワークとなります。

営業戦略や経営戦略に携わる方は、こうしたフレームワーク関連について学ぶ機会が多いでしょう。

「とりあえず、これらのフレームワークでやってみよう!」
という場合も多いかもしれませんが、その前に少し考えてみましょう。

この分析・検討結果がMECEであると、どうやったらわかるのでしょう。

そもそも、「ここからここまでの範囲の中で重複なく、抜けがないように」という、『考える範囲』を関係者が共有していなければ話しになりません。

意外とこの点が抜けたまま議論される場合が多いのです。

例えば、眼鏡販売店がSWOTで、自店舗の脅威になるものを検討した時に、ある人はライバル眼鏡店のみを見ており、実は他の人はレーシック等の視力矯正手術まで念頭に入れて議論しており、お互いにそのズレに気付いていない場合があります。(眼鏡そのものだけならそれほどズレないかもしれませんが)

インドには、盲目の方々が同じ一頭の象を触りながら、鼻を触った人が「樹の枝のようです」、足を触った人が「柱のようです」、耳を触った人が「扇のようです」等と答えたという寓話があります。

皆正しいのです。ただ、触っている部分が違う、そして全容を把握できないがゆえに食い違ってしまうのです。

それでは、皆が全容を共有することはできるのでしょうか。

それはできません。

人は性格も、価値観も、これまで歩んできた人生経験も全て異なります。家族間でも完全な共有は不可能です。そもそも同じ色を見て「赤」だと皆が言っても、実際に見ている色が同じかどうかはわかりません。

教育や文学で著名なジョージ・バーナード・ショウもこのことについて
「コミュニケーションにおける最大の問題は、それが達成されたという幻想である」
と述べています。

意思の完全な疎通は幻想です。

企業においても、関係者全員が完全に議論の結論や意図を、同じ質・内容で共有することは不可能です。

しかし、完全に一体となって共有することは不可能でも、手を取り合って同じ方向に向かい、ペースを合わせて進んでいくことは可能です。(イメージとしては二人三脚のようなものでしょうか)

そのためには、「そもそも、SWOTを今する理由はなんだろう」「この議論はなぜ開く必要があるのか」といったように、皆が何度も立ち返ることのできる機会を作る必要があります。

そして、これは本来コンサルタントに期待されている最も大きな役割なのです。

難しい分析を華々しく見せるだけで、実行する現場の人間が「それではどうすればいいの?」という状況で終わらせてしまうコンサルタントの在り方は、無責任ですね。

少なくとも、分析した結果を見せる際に、
「私は、今回の対象範囲はこのように定義しています。」
とMECEであるための、自分の考えている範囲をしっかり説明できないような場合は、関係者との認識を擦り合わせる機会がないまま話しが平行線になる可能性が高くなります。気を付けなければならないと考えています。

人生における人間関係も、これに通じるところがありますね。

橋本圭司