ネットワーク科学という分野があります。
これは、インターネットや経済、細胞などの生命活動から人間関係まで多くのネットワークには類似性があるのではないか、という視点で研究が進んでいる科学です。その研究の中でたいへん面白いネットワークの形がわかってきています。
ここでは詳しい説明は省きますが、ネットワークがどのようなものか身近な例で説明します。
Aさん(世界中の誰でもいい)がBさん(同じく世界中の人からランダムで選ぶ)に手紙を人づてに届けようとした場合、自分以外に平均して5人程介すると届いてしまう、というものです。
『六次の隔たり』と言われています。
どうしてこうなるかというと、世の中には隣近所だけ知っている人がいる一方で、世界中に知人を持っている顔が広い人間も多くいるため、そうした人々が世界中の人の距離をグッと縮める役割(ハブ)を果たすからです。
これは実際にアメリカの大学やドイツの新聞社等が実験してみた結果、ある程度実証されているそうです。
SNSやインターネットが浸透したため、最近はより少ない数になっているとも言われます。
「この人とあの人が実は知り合いなの?」といったことが、あなたの周りの人間関係にもありませんか?
そんなことを考えていると、私が大学時代にゼミ入試に落ちた時の事を思い出しました。
当時、まさか落ちるとは夢にも思っていなかったため、落ちた時は非常にショックでした(笑)。
その後、友人達から「あそこは高校等下から上がってきた人がネットッワークを駆使して、優先して入りやすいゼミだ」と聞き、がっかりした記憶があります。
そのため、滑り止めのゼミを探すか代わりに何か別の独自の道を選ぼうと考えました。
ただ、ゼミ入試を辞めたからといって、何をしたらいいのか皆目見当がつきません。
そこで、ある友人に相談しました。その友人は、学生団体の大がかりなイベントを企画して大手企業からスポンサー契約とってくるようなバイタリティのある人物でしたので、そのネットワークの広さの秘訣を尋ねると
「友人の友人で、この人は面白い事してるよ、という人を探して紹介してもらう。それを延々と繰り返す」
とのことでした。
実際私も早速挑戦してみると、いきなりインターン先を紹介してもらうなど、上々の成果を挙げることができました。
この方法は、本気で取り組めば効果絶大です。
しかし注意しなければいけない点があります。
果たして「Aさんの紹介で貴方のことを知りました。友人になりましょう。それから、誰かお知り合いで面白い方はいませんか?」と近付いてくる人とすぐに仲良く付き合えますか?
これは極端な例ですが、人脈を広げようと頑張れば頑張るほどこの様な印象を相手に与えてしまいがちです。
それに、何よりその相手の方にも失礼ですね。
ですので、最近は人脈が広いか否かは全く問題ではないと考えるようになりました。
そもそも『脈』という漢字は、左の『月』が『にくづき(肉月)』と呼ばれる部首で、肉体に関する漢字に使われ、右の『爪』に似た形の部分は、川から支流の分かれ出た姿を描いた象形文字だそうです。
『人脈』という漢字の意味は、人の体の中から広がっていくものだという印象を私は受けます。
血管のように人にとって最も身近な大切なものであり、外面に表れたあたなを表現する体の一部。だからこそ今いる身近な人を大切にして、お互いに知り合えた事をただただ感謝しあえるような関係を一つでも持てればいいのではないでしょうか。
それはただ顔と名前と連絡先だけ知っているような関係をどれ程沢山持っているよりも、遥かに価値があることだと思います。
そういった尊い関係がきっかけとなり、「この人なら自信を持って推薦できる」と広がっていくのなら、これこそが真の意味で『人脈が広がる』ということでしょう。
『広げる』のではなく『広がる』のです。
それに、たった5人を介したら誰とでも繋がれる世の中。そんなにあくせくしなくてもいいとは思いませんか。
(橋本圭司)