『96時間 レクイエム((非情無情ロング・バージョン)』を見ました。
ネット上で「あまり面白くない」というネガティブな評判が目立っていたので、あまり期待せずに(ウソです)見たのですが、どうして、どうして、なかなか面白く見ることができました。
もちろん、前回までの2回がトータルなハッピーエンドであったのに対し、すでにネットで十分過ぎるくらいに広がっている「お母さん(つまりリーアム・ニーソン扮するブライアン・ミルズの元妻)が亡くなる」という『非常、無情』が冒頭から飛び出すので、とてもハッピーエンドというわけには参りません。
とはいうものの、リーアム・ニーソン扮する主役ブライアン・ミルズの相変わらずの無敵ぶりには変わるところなく、あいかわらずのスーパーマンぶりで、最後には『無事』敵討ちに成功するという点では変形バージョンではありますが「ハッピーエンド」といっていいのではないかと思います。
今回の作品で特筆するべきは、元奥さんの殺害容疑者として警察から追われるリーアム・ニーソンを執拗に追いかける刑事ドッツラー(フォレスト・ウィテカー)の登場ではないかと思います。
全篇通じて、追う者、追われる者の立場を超えての、「むむっ、おぬし出来るな」といった感じの「乃木将軍とステッセル」的感慨満載といった感じではあります。このあたり、の感覚は標準的日本人にもけっこう受けるのではないでしょうか。一昔前の話ではありますが、ハリソン・フォード版「逃亡者」のトミー・リー・ジョーンズ演ずるジェラード刑事を彷彿ともさせます。
フォレスト・ウイテッカーという俳優さんですが、ドラマ「クリミナルマインド」のスピンオフバージョン「クリミナルマインド・レッドセル」で活躍していますが、クリミナルマインドでも本作品でも、「敏腕刑事」という設定が同じだけでなく、作品中での行動パターン、人格、立ち位置、仕草にいたるまでがまったくのうり二つであったのが気になって気になって仕方がありませんでした。きっと、ウイテッカー自身、この役どころが非常に気に入っているのかなと思われます。そういった意味では、役作りというかキャラ立ちといった意味合いでは、ウイテッカーさんにとってはきっとこの仕事、けっこう美味しい仕事であったのではないかと思います。
スーパーマンを、一度、演じると役柄のイメージが固定して、それから先、碌な役に恵まれないという「スーパーマン役者のジンクス」とかいったような話もありますが、「定番」の役柄がつくというのは、役者にとって、少なくともビジネスとして、悪い話ではないでしょう。
それにしても、映画の最後、ウイテッカーがニーソンに「最初から犯人だとは思っていなかった」というシーンがあり、その理由が、「事件現場に残っていたベーグルがまだ温かかった。これから殺人をしようという時に、温かいベーグルを買うヤツなんかいない」というのには、ずっこけてしまいました。
「続篇はあるのか?」との問いに、ある時は「有るかもしれない」 と答えたり、別の時には「ない」と答えたりしているというリーアム・ニーソン。出資者の都合もあるので、主役だからと言って簡単には決められないのでしょうが、せっかく、ウイテッカーという「伴侶」を得たことでもあり、もう一作くらい頑張ってもいいのではないかと思います。
あまりやり過ぎると「水戸黄門」シリーズのようになりますから、後、一作くらいでしょうか。
(橋本惠)