象の杭

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この半年ほどの間、ずっと胸を痛めていました二男の問題が、わずかながら動きました。

とりわけ9月半ばからのこの1ヶ月半は、怒濤の激しさで、人は、本当に強いストレスにさらされると、食べることも忘れ、ましてやそれ以外のことは、ほとんど上の空になってしまうということを身をもって知りました。

救いは、孫たちの存在で、その子たちと会っています時には、癒やされ、心からの笑顔を取り戻せました。

心が壊れずにいられたのは、孫たちのおかげです。

毎日泣いてばかりいましたので、体重は落ち、周囲から「顔が変わった」と、しばしば言われました。

私は親として無力であることを思い知り、ただ祈ることしかできず、それさえも、本当にこの祈りは正しいのか、このクリーニングは正しいのかと、何度もくじけそうになりました。

子供の頃からスピリチュアルなことに興味を持ち、変遷はしましたが、常に神仏への信仰心を持ち、たゆまず祈り続けてきましたし、故意に人を傷つけたり悪事を働いたことも無いつもりですのに、なぜこうなるのか、何が間違っていたのかと、何度も何度も自分に問いかけ続けました。

これまでの自分の人生の中で、最も辛い時期でした。

信用できると思っていました社会的地位のある人々が、逆境になるといかに冷淡なものかを知りました。

こればかりは、祈りもクリーニングも、なかなか理性をコントロールできず苦しい思いをしました。まだまだ未熟です・・・

一方で、一緒に泣いてくれます友人の存在に救われ、自分も人のために泣ける人間でありたいという気持ちを新たにしました。

おそらく、二男も同じ思いでしょう。

二男は、法学部を卒業後に、医学部に再入学しました。
その初期研修医時代に書いていました文章を、一部抜粋します。

「(前略)患者さんはきっと長生きできる、きっと楽になれる。

少しでも長く、少しでも多く、好きなことをしたり、行きたいところに行ったり、会いたい人と会ったり、おいしいものを食べたりできる、一日でも長く、心地よい夜をすごし気持ちいい朝を迎えられる。

麻酔中の患者さんの目尻から流れた一筋の涙をみて思い出した、手を握って思い出した。

自分が医学部に行こうと思った理由、
弁護士じゃなく医者になろうと思った理由。

善悪決めて白黒つけて正義を守るなんて人格者にはそうそうなれない自分でも、病に向き合い行きようとすることの尊さは疑わないから、疑う必要がないから。

誰だって生きていればいいことあるよって、自分にも他人にも言っていたいから。
(抜粋終)」

自らそう言いながら、「正義を振りかざし過ぎ」てしまい、その代償は、想像をはるかに超えた大きなものでした。

まさに、事実は小説より・・・ともいえる経験をしました。

その課程で、二男は、もう人生を終わりにしたいと思うほど苦しみ、私も苦しみました。

この希有な体験を糧に、二男が成長し、進化してくれますことを願います。

もう一篇、二男が以前アップしていました文章を転載します。

小さな象をつなぐ杭と、大きな象をつなぐ杭は、まったく同じ杭だという。

子供の頃に「がんばっても無駄だ」と思い知らされると、成長して力強くなってもずっと「がんばっても無駄だ」と思いこんでしまうからだ。

同じように、人間をかたちづくる過去の束縛は計り知れない。

杭につながれた大きな象に、「君はそんな杭なんて簡単に引っこ抜けるんだよ」と教えてあげたとして、果たして象は意気揚々と逃げ出すだろうか。

杭の外の、未知の世界に突然飛び込むよりも、杭の中の、狭いけど長年見知った世界に甘んじる方を選ぶかも知れない。

同じように、人は現状より悪くなることをおそれる一方で、現状より良くなることをも密かにおそれている。

個を不自由にするこうした思いこみやおそれは、全て脳内の幻想にすぎない。

「自我」や「世界」に対する妄想が、人を無力に不自由にする。

そうした妄想を抱くことなく適切に「行動」することによって、物事を変えるチャンスを、誰しもがもっている。

世の中には数多くの先入観、集団的妄想が渦巻いているが、最終的に人を定義づけるのは現実の生き様であり行動に他ならない。少なくとも自身についてはそうでありたい。
(抜粋終)」

(追記)

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長男が大学院時代に同期でした留学生の結婚式に参列しました。

新郎はエジプト、新婦はイエメンからの留学生です。

イエメンは現在、情勢不安のため、日本の大使館も閉鎖された状況です。
また友人として参列のシリアからの留学生は、母国へ帰ることもできない状態です。

それでも皆、心からの祝福でいっぱい!

日本の結婚式のようなスピーチや親族紹介などはありませんが、皆さん、踊る!踊る!踊る!

そして「日本の両親」であります 京都大学大学院医学研究科・社会疫学の木原正博教授と新婦、同じく社会健康医学の雅子教授と新郎とのラストダンスは、美しく感動的で、涙が止まらなくなりました。

木原教授ご夫妻は、多くの留学生のために、公私にわたり指導され、困難な時には助けられ、本当の両親のように慕われていはりますご様子で、深い感銘を受けるとともに、羨望の気持ちが湧き上がりました。

と同時に、ともに集う若者たちの未来が、どうか平和で幸多きものですようにと、祈らずにはいられませんでした。

ありがとうございます。