陳情書

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京都市長 門川大作様

 

区域外避難者(自主的避難者)を含む、

被災者受け入れ・支援に関する陳情書

  

趣旨

 

福島第一原発における原子力災害で放出された多量の放射性物質は、福島県内のみならず東北、関東圏に甚大な汚染をもたらしました。汚染の広がりは同心円状ではなく、各地で高い放射能、土壌汚染データが計測され、母乳・子どもの尿からの放射性核種の検出、甲状腺機能の異常などが続々と報告されています。しかし、具体的な避難等の対策が取られているのは、立入禁止区域(原発から20キロメートル圏内)、緊急時避難準備区域(30キロメートル圏内)、計画的避難区域(20ミリシーベルト/年を超える地域)のみで、これらの区域外で暮らす人々は、避難や移住に際し、東京電力、日本政府による支援、保障が一切なされていません。全ての人には、不必要な被ばくを避け、健康と命を守る権利があります。そのため、被ばくの影響を避けるために避難、移住、一時保養などを希望する人々を、放射能汚染の影響が少ない西日本等の各自治体等で支援していくべきだと考えます。そこで、以下の事項について陳情いたします。

 

☆東北、関東圏からの避難者、移住者、
一時保養者の受け入れ態勢を整備してください。
自治体による住宅、生活用品の提供、
交通費や避難にかかる生活費の金銭的な援助などを求めます。
また、自主避難者への避難支援活動をしている団体に対しても、
同様に助成金等の援助の幅を拡大してください。

 

☆福島第一原発からの距離、避難した日付などで区切らず、放射能汚染から身を守るための避難、移住を希望する東北、関東圏全ての人を支援対象者としてください。特に、年間被ばく量が1mSvを超える地域から避難を希望する18歳以下の子ども、妊婦、妊娠を希望する女性を含む世帯の構成員、同5.2mSvを超える地域から避難を希望するすべての人への早急な支援を強く求めます。また、今後避難を希望する人への支援はもちろん、すでに避難している人へも、遡り支援の対象としてください。未曾有の原子力災害は3.11以降途切れることなく続き、収束の目途はついていません。事故以来被ばくの危機は続いており、避難の日付でその被害を区別することはできません。東京電力、国からの補償、賠償がなされていない今、心ある自治体、議員の皆様からの、人道的な支援をしてください。

 

☆瓦礫の拡散、受け入れ、焼却を拒否してください。現状汚染が少ない西日本を放射能から守り、避難、移住、保養の体制を確立してください。

 

理由・根拠

 

<汚染の広がりと被ばく限度について>

 

放射能汚染の広範囲への拡散については、政府発表のほか、各自治体、政党、市民団体などの詳細な調査結果から、その深刻さが明白です。これらのデータと、「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」で定められた基準≪5.2ミリシーベルト/年以上(管理資格の持つもの以外の立入禁止)、1ミリシーベルト/年以上(18再未満の児童、妊娠可能な女性の立入禁止)≫を照らし合わせると、指定された避難区域外に暮らす人々にも外部、内部被ばくの危険性があることは明らかで、避難、移住の権利、必要性があると考えることが妥当です。原発事故後に引き上げられた20msv/年以下という被ばく基準は安全値ではなく、政府により強いられている“ガマン値”です(20msvまでは我慢しなさいという意味)。国際的にも、放射能には一定の数値までなら被ばくしても安全であるという閾値(しきいち)がなく、低線量でも危険性があるという認識で合意がなされています。原発事故後に日本人が放射能に強くなったという訳もなく、あくまで従来の基準に基づいて判断されるべきです。

-参考資料- 

☆区域外避難者アンケートの抜粋※国際環境NGO FoE Japan実施

http://hinan-kenri.cocolog-nifty.com/blog/2011/10/post-fc46.html

(東京電力に向けての言葉である「賠償、補償」は、受け入れ自治体に向けての要望では「支援」にあたると考えます)。東京電力、国からの賠償がなされていない今、心ある自治体、議員の皆様からの、人道的な支援が必要です。

※以下、避難してきたかたがたのご意見です※

 

・私たち家族3人は、本年811日に長年住み慣れた郡山市を離れました。私は長年勤めた会社を退職し、家内は生まれてから30数年住み慣れた土地をあとに、息子は何がなんだかわからないまま、大好きな幼稚園のお友だちや先生と離れ離れになる選択でした。家内は現在妊娠8ヶ月になります。私たちは福島第一原子力発電所の事故がなければ、福島を離れることはありませんでした。人それぞれ、愛する人たちを守る方法にはやり方があると思います。

どうか私たち「自主避難者」と呼ばれる者が、断腸の思いで選んだやり方を、愛する人たちを守る正当な方法であることを理解してください。

 

・親としては、子どもを汚染されていない土地へ…と思ったけれど、補償もない中遠くに行くと、父親が会いに来る交通費がどうしても出せない。結局、すぐに避難させなかった自分・遠くへ避難させる財力がない自分を責めながら、関東の親戚宅へ避難しました。しかし間借り生活には限界があります。子どもが友だちと遊ぶスペースもなければ、経済的に不安があり、習い事もさせてあげられません。働くにも、低学年の息子の長期休暇を考えると条件が合う仕事がありません。でも避難する場所があるだけで幸せだと思うように努力しています。福島中通りには、いることに不安があっても避難できない人がたくさんいます。

 

・自主避難を否定することは、幼い命を摘み取っているのと同じです。逃げたいけれど、張り巡らされた安全キャンペーンに縛られ、子どもにすまないと自分を責める親の心。

逃げたけれど、補償も未来もみえず、不安な日々。

 

・多くの人が不安にかられ避難しました。また不安の中でその地に留まり暮らしている人々もおります。福島原発事故の収束はまだまだ先行きが見えず、放射能汚染はこれから長期にわたって続きます。どうか避難区域外であるなしにかかわらず、公平に避難された方の補償をお願いいたします。少しでも先行きが見え、未来に希望が持てるように、どうか十分な補償が行われますようにお願いいたします。

 

 

 

<放射性瓦礫の危険性について>

 

東日本大震災により生じた2200万トンもの瓦礫処理が、被災地の復興促進のためにも急務であることは言うまでもありません。しかし、福島県内のみならず、周辺他府県の瓦礫にも、福島第一原子力発電所の事故により拡散した放射性物質が含まれていることが明らかとなっています。

現在、環境省は「災害廃棄物の焼却処理により発生する焼却灰の放射性セシウム濃度が8,000Bq/kg以下」を通常の廃棄物と同様の処理が可能な線量基準とし、全国の焼却施設で処理を進めようとしています。また100,000Bq/kg以下の焼却灰も、遮蔽等環境中への漏出防止策を講じれば、管理型最終処分場での埋め立てが可能としています。

 

8,000100,000Bq/kgという放射線レベルは、原子炉等規制法、及び「放射能濃度についての確認等」に関する規則に定められた、「放射性物質として扱う必要のない」放射線レベル、いわゆるクリアランスレベル(Cs134137合わせて100Bq/kg)の801000倍にもあたり、従来なら低レベル放射性廃棄物として厳重に処分・保管されていたものです。焼却灰を一般廃棄物と同様に処理するのであれば、クリアランスレベルの順守が求められます。

ただし焼却灰に含まれる放射性物質の濃度をクリアランスレベル以下におさめるためには、焼却前後の濃縮率を33.3%とした場合、受け入れる瓦礫に含まれる放射性物質の濃度は約30bq/kgにとどめる必要があります。

しかし、これらの基準の対象はセシウムだけにとどまっています。私たちは、現在まで十分な測定が行われていないストロンチウムやプルトニウムなど、その他の放射性物質の拡散も懸念しています。福島第一原発から約250km離れた横浜で195bq/kgのストロンチウムが検出されたことから、周辺県の瓦礫にもストロンチウムが拡散していることが予想されます。またプルトニウムの拡散状況についても、早急な調査が必要です。

 

このような状況での瓦礫の受け入れは、その搬送から仮置き、焼却、焼却灰の処理の全過程で、周辺環境の二次汚染を引き起こす危険性が懸念されます。安全な生活環境を求めて西日本への避難・移住を希望する被災者にとっても、放射性物質を含むがれきの持ち込みにより西日本にまで汚染を拡大してしまっては、安心して暮らすことのできる場所を奪われることになります。放射性物質は一旦拡散させてしまうと、除染も、汚染状況の把握すらも大変に困難です。関西広域連合は瓦礫受け入れを表明していますが、住民はもとより、西日本へ避難、移住する被災者にとっても、安全な生活環境を守るために、災害廃棄物については受け入れをしないよう要望します。

                        以上